ビルの恋
洋食・吉野
翌週の金曜日、私はいつもより早く目が覚めた。

伊坂君とランチの日だ。

何を着ていったらいいのだろう。

クローゼットを開けて考える。

おしゃれしすぎるのは恥ずかしい。

地味なのも申し訳ない。

外は桜が満開で、春の陽気だ。

こういう日はきっと、シンプルで爽やかなスタイルが良い。

「白シャツにしよう」

気に入って3年着ている白シャツを手に取る。

小さめの角襟に柔らかい生地で、着心地がいい。

合わせるのは、細身の黒いクロップドパンツ。

薄手のグレーのロングカーデガンを羽織る。

アクセサリーは、淡いピンクトパーズのドロップ型ピアスを選んだ。

黒の7センチヒールを履き、ベージュのトレンチコートを羽織り、家を出る。
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