ビルの恋
デスクに戻り、コーヒーを飲みながら、サイモン達が深夜やり取りしたメールに目を通す。

必要な処理をピックアップしていく。

斎藤さんのアシスタントの他、サイモンとチームメンバーの5人がスムーズに動けるよう補佐するのも私の業務だ。

今日は、会議の設定を3件と、プレゼン資料の大量プリントアウトを急ぎで片付けなくてはならない。

合間に、斎藤さんからの指示もあるだろう。

8時になり、彼女が出勤してきた。

いつも8時に出勤して17時に終業する。

「おはようございます」

作業の手を止め、顔を見てあいさつする。

「おはよう。今朝もメール先に確認してくれたのね、ありがとう」

斎藤さんは、いつもきちんとお礼を言う。

少し冷たい感じがするが、仕事ができるし、することに無駄がなくて、私は好感を持っている。

定時に帰ることについて、それとなく悪口を言いたがる秘書もいる。

でも斎藤さんはそういう契約で働いているので、彼女にしてみれば当然の権利なのだ。

「斎藤さん」

斎藤さんがデスクに落ち着いたのを見計らい、小声で話しかける。

「何?」

「今日、11時30分にランチ出たいんですが・・・いいでしょうか?」

「いいわよ、もしヘルプが必要だったら声かけて」

良かった、あっさりOKしてくれた。

「ありがとうございます」

急いで作業に戻り、会議室を立て続けに3つ、予約した。
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