ビルの恋
「桜さん、本条君とデートじゃないの?」
思わず、横槍を入れる。
「違いますよ!
たまたま帰り一緒になったので、一杯どう?という流れになっただけです。ね?」
本条君におごらせようとしたな。
「ええ、まあ・・・」
本条君が口ごもる。
河野桜なんて無視すればいいのに。
「あの、申し訳ないんですが、時間取れそうにないので」
やんわり断ろうとする伊坂君。
でも河野桜は引き下がらない。
「大丈夫ですよ。
同じビルにいたら何とかなりますって」
ほら。
「無理です。ごめんなさい」
伊坂君が、今度ははっきりと断った。
場に流れる気まずい沈黙。
「あの、でも、お気持ちはありがとうございます」
伊坂君は慌てて付け足し、財布を出した。
「これで」
と1万円札を出し、バーテンダーの前に置く。
「ありがとうございます。少々お待ちください」
バーテンダーが軽く頭を下げ、お釣りを取りに行こうとする。
「結構です」
そう言うと伊坂君は、椅子から立ち、
「出よう」
と私を促した。
エレベーターホールに出る。
もう少しゆっくりしたかった。
河野桜さえ来なかったら…あいつめ。
心の中で毒づいていると、
「お客様」
後ろから声をかけられる。
見ると、50歳くらいだろうか、黒服を着た男性が立っている。
思わず、横槍を入れる。
「違いますよ!
たまたま帰り一緒になったので、一杯どう?という流れになっただけです。ね?」
本条君におごらせようとしたな。
「ええ、まあ・・・」
本条君が口ごもる。
河野桜なんて無視すればいいのに。
「あの、申し訳ないんですが、時間取れそうにないので」
やんわり断ろうとする伊坂君。
でも河野桜は引き下がらない。
「大丈夫ですよ。
同じビルにいたら何とかなりますって」
ほら。
「無理です。ごめんなさい」
伊坂君が、今度ははっきりと断った。
場に流れる気まずい沈黙。
「あの、でも、お気持ちはありがとうございます」
伊坂君は慌てて付け足し、財布を出した。
「これで」
と1万円札を出し、バーテンダーの前に置く。
「ありがとうございます。少々お待ちください」
バーテンダーが軽く頭を下げ、お釣りを取りに行こうとする。
「結構です」
そう言うと伊坂君は、椅子から立ち、
「出よう」
と私を促した。
エレベーターホールに出る。
もう少しゆっくりしたかった。
河野桜さえ来なかったら…あいつめ。
心の中で毒づいていると、
「お客様」
後ろから声をかけられる。
見ると、50歳くらいだろうか、黒服を着た男性が立っている。