ビルの恋
「Bar54、支配人兼チーフバーテンダーの堺と申します」

名刺を伊坂君と私にくれる。

「せっかくお楽しみのところ、私どもの配慮が行き届かず大変失礼いたしました」

河野桜を隣に座らせてしまったことを詫びている。

「いえ、同僚が声をかけてきただけですので。
こちらこそ、かえって恐縮です」

全部、河野桜が悪い。

それでも堺さんは詫びる姿勢を崩さない。

「お気遣いありがとうございます。
しかしいずれにしても、代金を頂きすぎております」

「個室をご用意できますので、ご案内させて頂けませんか?」

伊坂君と顔を見合わせる。

思わぬ提案。

「ありがとうございます。ではお言葉に甘えます」

伊坂君が答える。
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