ビルの恋
「これはシリウスのメニューです」

「コースだと10皿。
決められたものがサービスされます。
選ぶワインは、食前酒・白・赤の3種が無難でしょう。
グラスペアリングといって、皿ごとに合うワインを少量ずつ出してもらうこともできます」

ここまで説明して、堺さんがタブレットに手を伸ばし、違う画面を表示する。

「こちらはアラカルト。
コースに比べて一皿の量が多いので、前菜・メイン・デザートの3皿で十分です」

「価格的には?」

「コースの方が全般的にお得です。
少量多品種で楽しめますので。
でもシリウスの場合は、アラカルトにしても、さほど差はありません」

堺さんが、手元のメモに試算してくれる。

そのメモを渡しながら続ける。

「アラカルトは一皿の量が多いので、お好きなものをたっぷり召し上がれます。

お二人の選ぶメインにもよりますが、ワイン一本で通すことも可能ですし、マリアージュがうまくいくと、満足感は高いと思いますよ」

「アラカルト、楽しそう」

堺さんがにっこり頷く。

「でも、メニューの選択は好きなものを選べばいいとして、ワインまでうまくオーダーできるかしら」

「あとソムリエにご相談なさってみてください」

話していると、伊坂君がやってきた。

「伊坂君、コースかアラカルト、好みは?」

「え?コースだけじゃないの」

「シリウスはアラカルトで頼んでも楽しいって、堺さんが」

「そうなんですか。知らなかった。
フレンチは接待でたまに行く程度だから」

「こう言っては失礼かもしれませんが、お二人ともまだお若いですから、聞けば店の方でも丁寧に教えてくれますよ」

「食前酒でも楽しみながら、ソムリエと話してみてください」


< 42 / 79 >

この作品をシェア

pagetop