ビルの恋
その日のディナーは、素晴らしかった。

堺さんに教わった通り、シャンパンを飲みながら、じっくりメニューを選んだ。

それぞれ、食べたいものとワインの好みをソムリエと相談して、アラカルトに決めた。

伊坂君は、ホタテの前菜にメインは鴨。

私は、エビの前菜に同じくメインは鴨。

辛口の白ワインと、どっしり濃厚な赤ワインを合わせた。

「美味しい。
こんなにおいしくお肉食べるの、初めて。
ワインってすごいね」

「そうだね。
なんか、大人になった感じするな」

「もう29だけどね。
まだまだ知らないことはあるね」

最後の一口を食べ、ワインでのどを潤す。

本当においしかった。

「デザートは召し上がりますか?」

ソムリエがにっこり笑って聞く。

二人とも満腹だったので、デザートは琵琶のソルベを少なめにもらった。

最後に伊坂君はコーヒーを、私はハーブティーを飲んだ。

本当においしかった。

仕事の合間に、予約の電話をかけ続けた甲斐があったというものだ。

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