ビルの恋
「サイモン?入っていいですか?」

個室のドアをノックする。

どうぞ、と言われたので室内に入る。

サイモンは仕事の手を休め、こちらを見た。
青い目をいたずらっぽく輝かせ、私に聞く。

「プレゼントは気に入った?」

「もちろんです。あの、お気遣いありがとうございます。
びっくりしたし、感動しました。大切にします。」

「それは良かった」

サイモンは満足そうに頷いた。

「では、これで失礼します」

仕事の鬼・サイモンの部屋に長居は無用だ。
邪魔をしてはいけない。

部屋から出ようとすると、

「ちょっと待って」

と呼び止められる。

まだ渡すものがあるんだ、とサイモンはA4の用紙を2枚、手渡した。

「そこに座って読んで」

と、サイモンのデスク前の椅子を指す。

< 48 / 79 >

この作品をシェア

pagetop