ビルの恋
和食・兎屋
伊坂君の名刺をもらって以来、私はずっと忙しかった。

上司のサイモンは、大型のリゾート開発の契約を狙っている。

そのためのプレゼン準備が続いていた。

チームメンバーは、

中堅のナイスミドル星野さん&和田さん

入社8年目のバリキャリ内山さん&田部さん、

それに2年目の本条君だ。

みんな激務だが、特に本条君は大変そうだ。
資料作成の下調べその他、様々な作業に忙殺されている。

補助的な作業は斎藤さんと私が担当しているが、斎藤さんは17時で帰宅するので、急ぎの作業は私が残業して対応する。
本条君の雑務ヘルプも私が担当。

そういうわけで、私は連日残業が続いていた。

伊坂君にもらった名刺はデスクの引き出しに入れたまま。

忙しいのを自分への言い訳していたが、実際のところは、私は伊坂君に気後れしていた。

若手エリート弁護士が、取り立てて美人でもない、29歳派遣OLを本気で相手にするとは思えなかったからだ。

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