明日も歌う あなたのために
そんなことを考えていると、
優しいピアノの音が鳴り、皆が歌い出す。
出遅れた私は慌てて歌い出した。
高梨はそれに気づいたらしくて、ピアノを弾きながらクスッと笑う。
私はなんだか恥ずかしくて目を逸らす。
だけど高梨がもう私の方を見てないことを確認すると、逆に私は高梨を見詰めた。
─────綺麗、だな………。
男の子に綺麗、なんて可笑しいかもしれない。だけど、それ以上に相応しい言葉もない気がした。
私は高梨の優雅にピアノを弾く姿に見とれて、無意識にずっと高梨を見ていた。
自分が音痴だということも忘れ、気持ちよく歌っていた。
だけど………………………、
高梨の弾くピアノのテンポが次第に指揮者に置いていかれる。
あれ、と思って高梨を見ると、さっきの余裕な表情はそこには無くて、鍵盤だけを見詰めてテンポを持ち直そうとする。
皆も可笑しいと思いながらも、なんとか高梨のピアノに合わせて歌い続ける。
だけど当然歌声はバラバラになっていく一方で、仕方なく指揮者が一旦合唱を止めようとした時、
先に高梨がピアノを弾く手を止めた。