明日も歌う あなたのために
そうは言ったものの、
まだ苦しそうだった。
触れ合っているから伝わる
さっきからすごい熱だ。
「もう大丈夫ですから………」
「でも、横になると苦しいなら眠れないじゃないの」
「ちょっとベッド起こして寝ます」
そして、また笑った。
同じだ、いつも同じ笑顔。
これ以上なにも言わせてくれない、
優しい笑顔なのに、ちょっと冷たい。
「佐原さん、ありがとう。
忙しいでしょ?」
「え、あ………うん。何かあったらコール押してね」
湊くんは頷いて、小さく手を振った。
───患者と、看護師。
それ以上もそれ以下もない。
そんな当たり前のことを、
改めて再確認させられた気がした。
ひとつのことに真剣になると
周りが見えなくなるのは、私の悪い癖だ。
そのことを、改めて湊くんに
教えられたみたいで、情けない。
───だけど、それ以上に……悲しかった。