明日も歌う あなたのために

『そっか…………』



すると、沈黙。

花菜さんの勢いに圧倒されてた俺は、そこでやっとひと息つく。



「花菜さんの声聴くの、久しぶり」



透き通る様な、優しい声。
なんにも変わってない。



『湊くんの声はちょっと違うね』



「そう?」



『熱っぽい声してる』



「はは、今日だけだよ」



『その笑い声、湊くん変わってないね』



「変わらないよ、たったの1ヶ月で」



───だけど俺は、あなたが変わってしまっていないかと、不安だったりもしたんだ。



だけど俺は、変わらないと前に進めない。




「花菜さんあのね、今日………花瑠が大切なことに気付かせてくれたんだ」


俺の唐突な話題に、花菜さんは少し間を空けて『………花瑠が?』と聞き返す。




「気付かせてくれたのは、俺の気持ち。気づかない振りは出来なかった。やっぱり…大切だから」




『……うん』




「俺、今こんなに弱いけど。絶対強くなるから。そしたら胸を張ってこの気持ちを伝えたい」





『うん……うん…』




「ドナーが見つかったら、俺 花菜さんの病院で手術を受けるだろ?そしたら次に花菜さんに会うのはその時だ」



そうでありたいと、深く思う。


本当は今すぐにだってあなたの元へ駆け出して、この気持ちを伝えたい。




だけど、俺はあなたを守れるほどに強くなりたいと思うんだ。




想いを伝えるのは、その後。



だから、だからあなたは…………











「だから今度逢えた時は……、俺の大切な気持ちを、笑わないで聴いてくれますか」








< 121 / 303 >

この作品をシェア

pagetop