明日も歌う あなたのために
【花瑠 side】



いつもより少し遅く教室に入ると、いつもは後から来る高梨がもう席についていた。


常に人に囲まれている高梨が、珍しく1人で、しかも何故かカーディガンを捲って自分の腕をまじまじと見詰めている。



───何してんだろ……??




「高梨おはよ」


すぐ後ろに立っても気づかない高梨に挨拶をする。


「あ、おはよー花瑠」



───まだちょっとその”花瑠”呼びも私はまだ慣れないな………。




「もう具合いいの?熱下がった?」


「うん下がったと思うよ。ほら、」


そう言って高梨は自分の手を伸ばして私の首筋に触れる。


ひやっとした高梨の手だけど、突然すぎる高梨の行動に、対照的に私の体温は上がっていく気がした。



───こうゆうの………高梨はわざとやってんのかな……?無意識?天然タラシ……?



「ってゆうか、自分の腕 凝視してどうしたの?」



「あ、いやなんかさ、情ねぇ腕だなぁと思ってさ」



「??なんで?点滴の痕?」



「いや、それは割と消えるからいいんだけどさ」



肌が若いからねー、と苦笑いする高梨。


入院中は症状の一環として浮腫んでいたけれど、今は落ちついているのか、普通にほっそりした高梨っぽい腕だ。
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