明日も歌う あなたのために
高梨に初めて会ったのは、中学一年生の四月。入学したての頃。
私は体育のバレーで突き指をした。だけどまだクラスに保健室に付き添ってくれるような仲の良い友達は居なくて、
私は1人で慣れない校舎を歩いて保健室に行ったんだ。
ノックを二回して、「失礼します」と小声で言いながら扉を開く。
─────あれ、先生居ない…………。
代わりに、小柄な眼鏡の男の子が仕切りカーテンの開いたベッドに腰を掛けて、見慣れない雑誌を読んでいた。
シューズには私と同じ青の学年カラーのラインが入っていて、彼も1年生なのだと一目で分かる。
彼は私が入ってきたことに気付くと、黒いフレームの眼鏡を少し下にずり下げて私を一瞥した。
「痛そうだね」
ぽつりとそう ひと言だけ放って、読んでいた雑誌を閉じた。
目が合って気付く。
彼はいわゆる"イケメン"の類なのだと。
「今ね、先生居ないよ。俺 前の休み時間から居るけど、会ってない」
「あ、そうなんだ……」
───どうしよう、ここで先生を待とうか。
だけど知らない男の子と二人きりなんて………ちょっと気まずいなぁ。