明日も歌う あなたのために
入口付近で私がもじもじしていると、彼は
優しい笑顔を浮かべて「おいで」とでも言うように手招きした。
「突き指くらいなら俺が手当てしてあげるよ。おいで」
「えっ?」
私が驚いて躊躇っていると、彼はまたクスッと笑って言う。
「大丈夫。初めてじゃないから、信用していーよ」
どうやら彼は私が見ず知らずの彼の手当てを信用してないと思ったようで。
そう思わせるのは何だか申し訳ないと思い、せっかくだから彼に手当てしてもらうことにした。
「じゃあせっかくだから、お願い」
「ん。そしたらまず冷やして」
そう言って彼は立ち上がり、まるで自分の部屋のように慣れた手つきで保健室の冷蔵庫を開き、当然のように氷嚢を取り出して私に渡した。
「あんまり氷嚢押し付けないようにね。15分くらい経ったらテーピングで固定するから。座んな?」
「あ、う…うんっ」
私は辺りをキョロキョロして、近くにあったベッド横の椅子に腰を掛けると、彼はまた元居たベッドに腰を下ろし、私と向かい合う形になった。