明日も歌う あなたのために


「───見てるとさ、羨ましくなっちゃうでしょ?だからここで雑誌読んでんだ」



私より少しごつごつした手が、器用に私の左人差し指にテープを巻く。


幼い顔立ちとは反対に、優しく大人びた表情をしてそんなことを言う彼に、返す言葉が見つからなかった。



「………テーピング、上手いね」



沈黙が気まずくて、ふと思ったことを口にした。



「昔バスケやってたからね。結構ガチで」




「そうなの?え………心臓は?」




「生まれつきじゃないよ。小4までは普通に運動もしてたし、動いたぶんお肉もお菓子もモリモリ食べてたし」




「え……今はお菓子とかお肉、駄目なの?」




「少しならいいんじゃない?でも、タンパク質がどうのこうの〜とか、コレステロールがうんたら〜とか、俺には良く分かんないから親に出されたもんしか食べないよ」




「そうなんだ………」




「うん、だから俺今めっちゃベジタリアン!」



そう言って悪戯っぽくニカッと笑う彼。


どうしてそんなに明るくしていられるんだろう…………。


───そんな生活を……小学四年生からずっと………?

大好きなバスケも止めさせられて、
好きなものを好きなだけ食べることも出来ないのに。

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