明日も歌う あなたのために


「ああもうやだぁ〜」


ナースステーションには友香しか居なかったので、思わず大きめの声でそう嘆きながらデスクに突っ伏した。



「いーじゃない。添野さん術後の経過も良いし3週間もすれば退院しちゃうわよ」



────それは……そうなんだけどね……。



「元気有り余ってる分余計なことばっかり考えるんだもん」



「付き合ってくれ〜、とか?」



「そうそうそれ。友香も言われたの?」



「まさか!添野さんは花菜が気に入ってるんでしょ?」



────うぅ………それ全然嬉しくない……。




彼はなんてゆうか誠実さに欠ける。

同じ「好き」を伝えるのにも真剣さってものがある。


彼は口癖のように付き合ってくれと言うけれど、そうゆう伝え方は嫌いだ。

だって、彼より9歳も年下の男の子でも、「強くるから待っててくれないか」なんて誠実なことを言ってくれるんだから…。


彼のような雑な伝え方に、惹かれるはずがない。



「あーっ花菜、あんたもしや………」



あの日の湊くんのことを思い出していると、友香がなにやらニヤニヤしながら得意げに言う。



「湊くんと比べたんでしょ、彼を」



「え、なんで分かるの!??」




湊くんとあの約束をした事を、友香には言っていない。それこそ花瑠にだって……誰にも言ってないのに。

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