明日も歌う あなたのために
「ハナちゃんおはよ〜。どう、今日こそ俺と付き合う気になった〜??」
翌日。
朝の検温で病室を訪れると、添野さんはいつもの調子で口癖を言う。
いつもなら苦笑いして交わすが、今日はそうゆう訳にもいかない。
ちゃんと、向き合わなきゃ。
「ごめんなさい添野さん。私、好きな人が居るので」
いつもとは違う私の反応に、添野さんも一瞬だけ表情が固まるが、すぐにいつものおちゃらけた笑顔に戻った。
私は真顔で作業を続ける。
「いつもと対応がちゃうやん、ハナちゃん。好きな人?医者とかかな?もしや玉の輿ー?」
「いいえ。13歳の男の子です」
私の言葉に、今度こそ完全に添野さんの笑顔が硬着する。
「は……?からかってんの?」
「本気です。以前この病室に入院してた中学生の男の子が好きなんです」
「は…………?あ、わかった!その子どっかの御曹司とかなんやろ?」
「なんでそうなるんですか?」
「だってそりゃあ、ハナちゃんの周りは若くて金持ちな医者とかぎょーさんおるやろうに、それ以上の理由がないとわざわざ中学生男子狙ったりしないやろ〜?」
「そんなんじゃありません。私は彼の一生懸命なところが好きなんです」
「良い子ぶらなくたっていいやんけ〜。結局美人な女にとっちゃあ男なんか金か顔やろ?それに関しては俺、どっちも持っとーかんね」
どこか得意げな顔をしてヘラヘラと笑い、両手を広げる添野さん。
以前聞いたが、確かに添野さんは大きな会社の跡取り。それでもって外見も一般的に見て充分”イケメン”だと思う。
だけど違う。
そうゆうことじゃない。