明日も歌う あなたのために
「………なぁ。本当に歌……諦めちまうのか…?」
何度も、何度も聞いたそのセリフ。
「もったいねーって、思ってくれただけで充分だよ」
「お前な………」
「もう言うなよ」
感情のない声で俺が言うと、
龍は言葉をぐっと呑んだ。
「──悪い……」
「いいよ、ごめん。
怒った訳じゃないから」
歌のこととなると、
俺はたまに冷静になれなくなる。
「俺、龍のことすごく応援してる」
嘘じゃない。
本当に心から応援してるんだ。
あれは小4の時だ。
『俺、いつか歌で食っていくんだ!』
『龍に出来るなら、俺にも出来る』
最初は、そんなくだらないきっかけで。
でも確かに俺たちは誓いあったんだ。
「二人で歌でテッペンとる」って。
周りには少しからかわれたが、
二人ならなにもかもが楽しかった。
───ごめんな、龍。
俺ひとり、裏切っちゃったな。
龍が帰ったあとの病室で、
俺はひとりベッドの上で蹲った。
胸が痛い。
たかが10分。
しかも病院だからいつもよりは控えめに
軽く歌っただけだ。
───こんなんでプロに、
なれるわけないだろ。
何よりも俺は、1年後、2年後、
そんな近い将来を生きていくのも
必死なんだから………………。