明日も歌う あなたのために



友達に言われたことを考えながら、教室に戻ろうと廊下を歩いていると、後ろから担任が話しかけてきた。



「ちょうど良かった佐原!教室までこれ運んでくれないか」


そう言って担任が渡してきたのは、ノートの山。



─────ついてない…………。





予想以上に重いノートに苛立ちながら、ヨタヨタと運んでいると、開けっ放した窓から強い風が流れてきて、煽られたカーテンが視界を阻む。



「きゃっ!」



危ない、と思った時にはもう遅くて、前のめりに転んだ私は、ノートを床にぶちまけていた。



─────さいっあく………。




注目を浴びながら、もたもたとノートを拾い集める。

なんだか虚しくなってきた………。





「女の子にこの量とか、鬼だな担任」





ふと柔らかい声がして、私よりすこし大きな手がノートを拾い始める。




「た、高梨…………」




「派手にやったねー」




見られてたんだ………。
うう………恥ずかしい。



私がポカンとしている間に高梨はほとんどのノートを拾い集め、私が手に持った三冊だけ残して廊下を歩きはじめた。





「え、え!高梨!いいよ、私が運ぶし!運んでもらうのは悪いよ!」



慌てて軽くなった僅かな荷物を持って駆け寄ると、高梨はわざとらしく首を傾げた。



「何が?俺、落し物を教室に届けるだけたから」




「落し物…………って」





───なにそれ、なにそれイケメンかよ!

いや、元からイケメンなんだけどさ!

そうゆうのは………なんてゆうか……


…………反則だ。





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