明日も歌う あなたのために
「あ、あのありがと………、なんかジュースでも奢るね」
教室にノートの山を届け終わった後、教室を出た高梨を追って言った。
「大袈裟。もともと花瑠が無償でやってたことなんだから、お礼してもらう義理はないよ」
「でもっ………、ほら…高梨、重いもの持つのとか心臓にはあんまり良くないって…聞いたことあるし」
情けないことに、全部運びきってもらってから思い出したのだ。
「だったらジュースだって良くないんだけど」
───あ、そう………だった…。
「それに俺一応男。ノートくらい重いの内に入らないから、馬鹿にすんな」
「そ、そうだよね…ごめん…」
気まずい沈黙。
なんか私、さっきから高梨に無神経なことしか言ってない気がする。
高梨にしては強い口調だったし、そこにはいつもの笑顔が無かった。
怒らせてしまったのではないかと、恐る恐る高梨の方をちらりと見ると、
高梨は片手で額を抱えて、ため息をついていた。
「ごめん…花瑠。今の言い方はまじで悪かったな……」
「え………?」
「イライラしてた、八つ当たりだ……ほんとに悪いな。気をつける」
「ううん……ちょっとびっくりしたけど…」
高梨がそんな不安定なんて、珍しい。
感情のコントロールは得意そうなのに。