明日も歌う あなたのために
そんな高梨の様子を心配して、クラスメイトがぞろぞろ高梨の席のまわりに集まり始めた。
「おい高梨大丈夫かー」
「大丈夫?高梨」
口々に声をかけるクラスメイトに、さすがの高梨も苦笑いだ。
「取り囲まないで……気持ち悪い」
「あーあ……、お前らちょっと静かにしてやってくれ。ミナ、吐きそうか?」
「トイレ行く?」
そう言って高梨の背中をさするが、高梨は大きく首を振った。
「無理。大丈夫。吐かない…」
────無理。大丈夫。って言葉として可笑しいよ……。
「今日はもう帰ったら?」
「─やだよ、今日放課後スタジオだろ……。やっと曲完成したんだからな…。ただでさえライブは2週間後に迫ってんのに……」
高梨は魘されたような声でそう主張する。
────INFINITYのオリジナル曲、完成したんだ……………!
「お前そんなんで歌えんのかよ」
「歌うよ…負けないって決めてるから俺」
────負けないって………何に?
「……つってもどうするよ、放課後までもつか?これ」
「スタジオ別の日にずらせないかなぁ?」
「や、もう今月は予約が満員らしい」
どうしようか……、と二人で相談していると、高梨を取り囲んでいたクラスメイトの数人が取り乱した声を上げる。