明日も歌う あなたのために
「おい高梨!?」
「高梨!?なんかやばいってこれ!!」
慌てて高梨の方を振り返る。
高梨が目に入った瞬間、
あの日、あの調理実習での出来事がフラッシュバックされて思わず額に汗が滲んだ。
真っ青を通り越して、灰白い顔色をして、胸を引っ掻きそうなほど強く掴んで、荒い息に飲まれるように椅子から床へ崩れていく。
「ミナ!!」
飯田が慌てて駆け寄り、落ち着いた手付きで高梨のスクバから薬ケースを取り出して私に投げつける。
訳もわからずおろおろする私に、飯田は大声で指示する。
「薬!舌下錠って袋に書いてあるヤツ!」
「わ、わかった!」
震える手で薬ケースを開けるが、たくさんあってどれがどれだか分からない。
────ぜ、ぜっかじょう………。
その間にも飯田は高梨の背中を軽く叩くように摩ったり、落ち着かせようと呼びかけたりしている。
私がモタモタしていると、クラスの女の子が横から手を出して、「これじゃない?」と言いながら、小さな薬をケースから取り出して飯田に投げた。
「さんきゅ!ミナ、飲めるな?!」
「…………っ……ご、め……っ」
「喋らなくていい!」
高梨は薬を受け取ると、震える手でなんとか口に放り込んだ。