明日も歌う あなたのために
「湊くんの"本当にやりたかったこと"って
歌のことなの?」
少し遠慮がちに言った。
「…………うん」
あれ、何で素直に答えちゃってるんだろ。
「諦めたのは………病気のせい?」
それ以外に、何があるんだよ。
俺が静かに頷くと、
佐原さんは小さく”そっか”と声を漏らした。
───なんだよ、その反応。
佐原さんは、透き通った瞳で
まっすぐに俺を見詰めた。
───気まずそうに、目を反らせよ。
俺も引き込まれるように
目を反らすことが出来なくて。
───もっと、可愛そうだって
憐れめばいいじゃないか。
だけど、その瞳には
憐れむような色も、気まずそうな色も
浮かんでいなかった。
「そんな目で見るなよ」
気付いたらそう言い放っていた。
言った途端から後悔していた。
だけど、何で後悔しているのかすら
よく分からなくて。
でも言わないと苦しかったんだ。
「───ごめんなさい、少し休みます」