明日も歌う あなたのために
「なんか……ふわふわしてたし、夢か現実かも分かんないけど。ああ、花菜さんが泣いてるんだ、ってすぐ分かった」
あの時、生と死の狭間で、私の声を聞いたのだろうか。
「俺が泣かせたんだなぁ……ってぼんやり思ってた」
「────湊くんが悪いわけじゃないわ…」
確かに私が泣いたのは湊くんが原因だけど、湊くんだって好きであんな状態になった訳じゃないんだ。
「強くなりたかったんだ…」
そう悲しげに微笑み、私の手をぎゅっと握り返した。
「湊くんは強いわ…………こうして頑張って生きてくれたんだもん…」
「皆が……花菜さんが居たからでしょ。俺は結局自分じゃ生きることも出来なくて……」
握った手が、まだ冷たい。
だけれども震えるほどに強く、痛いほどに強く、私の手を包み込む。
「花菜さんが居たから………迷わずに帰ってこれたんだ。だけどもし……もし、花菜さんが居なかったらどうなってたんだろ」
「湊くん………」
「もう、昨日からずっとカッコ悪いね、俺。今になってこんなことがすっげぇ怖い………」
震えているのは手のひらだけじゃない。
なんとか落ち着こうと、湊くんは点滴に繋がれた手を胸にあて、深呼吸をする。
だけどその震えは、治まってはくれない。