明日も歌う あなたのために





「そうだね…………」






花菜に聴いて欲しい。



気恥ずかしくて、自信がなくて。


声に出すのは難しかったけど、

俺の花菜への想いは、今朝花菜に伝えた「好きだ」だけじゃ、到底伝わりきらない。





──それに、俺には歌しかない。


歌があるんだから。






「───俺さ、今こんな声カスカスだし、これからも症状は悪くなるはずだし、手術もリハビリも頑張らないといけない」




──────だけど…………




「だけど、乗り越えないとね。この曲を花菜に歌って聴かせるために」





────怖かった未来にも、そうやってひとつずつ目標を見いだせたなら、

俺はきっと強くなれる。



今は花菜に追いつきたい、とかそんな難しい感情じゃなくて。





ただ、彼女の幸せそうな笑顔が見たい。





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