明日も歌う あなたのために

そんなある日のこと。


私はいつも通り龍と2人で高梨のお見舞いに行き、帰りの電車に乗ろうと改札を抜けようとした時、




「あれ……定期がない!!」



定期をなくしたことに気づいた。



「どっかに落としたのか……?」


先に改札を抜けてしまっていた飯田が、私の声に振り返り、言った。



「かもしれない……私、来た道を戻ってみる!」



───行きに駅を出た時はあったのだから、落としたんだとすれば………病院までの道や病院の中だよね。




「待て佐原、俺も一緒に……」



「いいよいいよ!飯田もう改札抜けちゃってるし、病院まですぐそこだし!」




「いや、でも…………」




「大丈夫!!」




飯田はまだ何か言いたげだったが、さすがに悪いので、無理やり遮って小走りで駅を出た。


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