明日も歌う あなたのために



しかし、駅から病院まで道を地面を見詰めながら戻り、丁寧に探し歩くが、一向に見つからない。



全然見つからないまま、結局病院に戻ってきてしまった。





────病院の中かな………?





そこでも私は一応来た道を辿って、ロビーの床やエレベーターの中など、通った場所を念入りに探した。





そうしているうちに、結局高梨の病室の前まで戻ってきてしまった。





───病室の中かもしれないよね………。




ダメ元で病室の中も探してみることにした私は、高梨の病室の扉をノックした。

中からは、少しまだハスキーな声で「はーい」と聴こえてくる。




それからゆっくり病室に入ると、ベッドに横向きに寝転がっていた高梨が、戻ってきた私の姿を見て、当然驚いた顔をした。





「花瑠??どーした、忘れ物?」




「うん、てゆうかあの定期……なくしちゃってさ」




私が今までの経緯を簡単に説明すると、高梨は眉間に皺を寄せて難しい顔をした。





「それは困ったよね、俺の病室には落ちてなかったよ」




「そうだよね………どうしよう」




実は今、月末だからか、とっても金欠。


定期が無くて現金で帰るとしたら、途中の駅からは降りて歩かなきゃいけない。


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