明日も歌う あなたのために
仕方ないか…………と、肩を落としていると、高梨がゆっくりとベッドから上半身を起こし言った。
「誰かが拾ったのかもしれないね。ナースステーションに聞きに行こう?」
そう言って高梨は布団から出て、ベッドの縁に座って、靴を履いた。
「え………?一緒に来てくれるの?」
「うん。1階で落としたのかもしれないし、ここのことは俺の方が詳しいだろ?」
「そうだけど。でも……大丈夫?」
高梨が目覚めてから頻繁にお見舞いに来ているけれど、まだ高梨は少ししんどそうに見えていたし、ベッドに横になっていることが多かったから……。
「大丈夫。そろそろ体動かさないとなまっちゃうからさ。──ごめん花瑠、入口のとこに掛かってるカーディガン取ってくれる?」
そう頼まれた通りに入口のすぐ側のハンガーに掛かっていた紺色の大きなカーディガンを高梨に手渡した。
学校でもたまにブレザーの下に着ているそのカーディガンを、高梨は袖を通さずに適当に羽織った。