明日も歌う あなたのために


「あの人の心配性は昔からなの?それとも職業柄?どっちにしても気にしすぎだよな」



ぎこちない手つきで車椅子を漕ぎ、私の少し前を行く高梨。


自分で動かすのは慣れないのか、それか初めてなのか。なんだかすごく危なっかしい。


「私が押すよ」


「やだ、悔しい」



謎の意地を張っていた高梨だが、エレベーターの入口に来た頃にはもうゼイゼイと息を切らして、私が車椅子を押していた。



「もー、歩くより体力使ってるじゃん…」



「はぁ………や、だって、自分で漕いだ方が少しは強くなれそうでしょ?」



「出た、高梨の”強くなりたい”。それこじらせて倒れたんじゃない!ほどほどにしてよ」



「───花瑠も大概心配性だよね。今の言い方すっごい花菜に似てる」




────あ………また、”花菜”って……。



おねーちゃんのことを”心配性だ”なんて文句を言いながらも、その表情はどこか嬉しそうだった。
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