明日も歌う あなたのために
「………ねぇ、高梨?」
「ん?」
「いつからおねーちゃんのこと”花菜”って呼び捨てにしてたの?」
「目覚めてすぐ。付き合い始めたのとほぼ同時に」
──チン、とベルの音が鳴って、エレベーターの扉が開く。
「───花瑠………?降りないの?」
「へ……………?」
「1階だよ」
「ああ……………」
ぼーっとしながら慌てて車椅子を押すと、前から人が乗ってきたので、エレベーターの出口付近でぐいっと方向転換した。
すると、車椅子のキャスターがちょうどエレベーターのドアレールに挟まってしまった。
それに気づかなかった私は、ぼーっとしたまま、早くエレベーターを出ようとぐっと強く車椅子を押した。
───ガシャンッ!
派手な音を立てて、点滴スタンドごと床に弾き倒された高梨。