明日も歌う あなたのために




「………ねぇ、高梨?」




「ん?」




「いつからおねーちゃんのこと”花菜”って呼び捨てにしてたの?」




「目覚めてすぐ。付き合い始めたのとほぼ同時に」







──チン、とベルの音が鳴って、エレベーターの扉が開く。




「───花瑠………?降りないの?」





「へ……………?」






「1階だよ」





「ああ……………」





ぼーっとしながら慌てて車椅子を押すと、前から人が乗ってきたので、エレベーターの出口付近でぐいっと方向転換した。

すると、車椅子のキャスターがちょうどエレベーターのドアレールに挟まってしまった。


それに気づかなかった私は、ぼーっとしたまま、早くエレベーターを出ようとぐっと強く車椅子を押した。





───ガシャンッ!




派手な音を立てて、点滴スタンドごと床に弾き倒された高梨。

< 223 / 303 >

この作品をシェア

pagetop