明日も歌う あなたのために



その大きな音と光景に、私はやっと意識を現実に引き戻した。



「た、高梨!!」



我に返って私が叫ぶと、周りに居たお医者さんや看護師さんが「大丈夫ですか?!」と一斉に高梨の元へ駆け寄った。



しばらく痛みに顔を歪めていた高梨だけど、やがて人だかりが出来ると、「大丈夫です」と笑いながら自分の力で身体を起こした。



点滴こそ無事だったものの、膝や肘を強く打って、その白い肌が赤くなっていた。


高梨を車椅子に座り直させてくれたお医者さんたちは「診ましょうか?」と言ってくれていたけど、高梨は「用事があるので」と断った。



そしてお医者さんたちが去っていき、私たちは再びに二人になった。




「た、高梨……あの」



「大丈夫だよ。ちょっとだけびっくりしたけど」



私が言いたいことを先に察して、笑ってそう言いながら胸に手を当てて何度か深く深呼吸をする高梨。





────そうだ………。


こうゆう、イキナリびっくりさせたりするのも……心臓に悪いんだ…………。



そう気付いたら急に、自分のしでかした事の危険さを思い知らされて、足が震える。


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