明日も歌う あなたのために
「花瑠」
「ご、ごめんなさい私ぼーっとしてて……」
「ね、花瑠。ちょっと休もうか」
そう子供に言い聞かせるように笑って言うと、自分で車椅子を漕いで、すぐ近くのロビーのソファーの横で止まった。
そして「おいで」と言うように、ソファーの上を、ポンポンと叩く。
午後の診察時間はとっくに終わっていて、ソファーには誰もいない。
私は、戸惑いながらもソファーに腰を掛けた。
高梨はそれを見て優しく笑うと、ゆっくりと車椅子から降りて、ソファーに座る私に向かい合うようにして床に膝をついた。
「大丈夫?花瑠、顔色悪い」
それはきっと、さっきのヒヤリハット体験のせいだろう。
高梨だって冷静だけれど、顔色はあんまり良くない。やっぱり、高梨の心臓を驚かしてしまったのだろうか。
「────そんなにびっくりした?」
「そ、そりゃ……私のせいで高梨が転んで…」
「違うそっちじゃない。俺と花菜が付き合い始めたって話」