明日も歌う あなたのために
「湊くん駄目!!」
二人に背を向けて駆け出して、病院の正面玄関まで来た時、
背後で慌てたように叫ぶおねーちゃんの声がして、思わず振り返った。
すると、左腕を誰かにグッと引かれた。
「え………、高梨!?」
私のすぐ後ろで、肩で息をしながら私の腕を掴む高梨。
慌てて高梨の後を追ってくるおねーちゃんの背後には、さっきまで高梨が座っていた車椅子が置き去りにされていた。
──────まさか、もしや………
いや、もしかしなくても………。
「高梨、走ったの!?」
私の質問に答える代わりに、高梨はぎゅっと空いている方の手でシャツの胸元を強く掴む。
おそらく走ったのはほんの十数メートルの距離だけれど、俯いた高梨の額には大粒の汗が滲んでいた。