明日も歌う あなたのために

湊くんの歌声を聴いたあの日、
彼を怒らせてしまったのは確実なのに、
その翌日に検温に訪れた時から
もういつも通りの笑顔で、
「おはようございます」と言ってくれた。

そのお陰で私は、気まずい思いをせずに
看護師として接することが出来ている。


私は花瑠のシチューを口に運びながら、
時計をちらりと見た。



────23時……、消灯から2時間。
湊くんは消灯するとすぐ寝てしまうけど、
そろそろ息苦しくて
起きる頃かもしれない。

最近は夜勤がなかったけど、
夜勤の人から湊くんが夜に
呼吸があまりに苦しいと、
ナースコールを押すことがあると聞いた。

その度に熱も上がって、
翌日の10時くらいに私が検温に行く時まで
引きずってしまっていることも
少なくなかった。


────湊くんは慣れてしまったかもしれないけど、夜間呼吸困難は結構油断できないのよ………。
特に湊くんは個室だから、
もし自分でナースコールを押すことが出来ないほどの状態だったら、発見が遅れてしまったら大変なことになるんだから………。


急に、湊くんがひどく心配に
なってきてしまった。

今頃、苦しい思いをしていないだろうか。しんどかったらちゃんとナースコールを鳴らしてくれるだろうか。
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