明日も歌う あなたのために
私が何か言い返そうと口を開くと、添野さんは呆れたような顔で「もーええ」と言った。
「用も無いのに呼びつけて悪かった。もー行ってええ。俺も、用事が出来たわ」
何やら考え込みながら適当にそう言う添野さん。
用事……なんてあるの?この人に。
多少の疑問は残るものの、せっかく添野さんからもう行っていいと言われたので、さっさと退散する他ないと思い、そそくさと病室の扉を開いた。
「なぁ、ハナちゃん」
呼び止められて仕方なく振り返ると、添野さんはまたあの余裕そうな笑顔を浮かべていた、
「俺、ハナちゃんを俺の女にするまで退院せえへんかんな」
「────迷惑です」
私が、添野さんと?
そんな日は来ない。
だって私は湊くんが好きだから。
誰も湊くんを越せない。
きっと湊くんも同じ気持ちでいてくれる。
私と同じように湊くんも私を強く想ってくれていること、
本当に素敵な事だけれど。
その感情が、時に彼自身の首を絞めてしまうのだと、私はまだ知らなかった。