明日も歌う あなたのために

「へえ、滅多に病室から出て来いひん思うたら、お勉強してたんやなぁ」






ノックもなしに扉が開いて、聞き慣れない関西弁。



花菜と同い年くらいの男の人が、腕を組んで入口に寄りかかって立っていた。




「…………ミナ、知り合いか?」



龍がボソッと俺にだけ聞こえるように尋ねてきたので、俺は小さく首を振った。




───全く知らない人だ。


服装を見るからに入院患者なのは確かだけど、どこかで話した覚えも会った覚えもない。




「お前が、例の”湊くん”やな?」




───”例の”……?


何でこの人俺のことを知ってるんだ?

ネームプレートを見て知ったんだとしても、一体何の用があってここに来たんだ?




「あのごめんなさい。どちら様ですか?」



「なんや、思ったより元気そうやな」





─────いやいや、誰だよ。

< 256 / 303 >

この作品をシェア

pagetop