明日も歌う あなたのために
「へえ、滅多に病室から出て来いひん思うたら、お勉強してたんやなぁ」
ノックもなしに扉が開いて、聞き慣れない関西弁。
花菜と同い年くらいの男の人が、腕を組んで入口に寄りかかって立っていた。
「…………ミナ、知り合いか?」
龍がボソッと俺にだけ聞こえるように尋ねてきたので、俺は小さく首を振った。
───全く知らない人だ。
服装を見るからに入院患者なのは確かだけど、どこかで話した覚えも会った覚えもない。
「お前が、例の”湊くん”やな?」
───”例の”……?
何でこの人俺のことを知ってるんだ?
ネームプレートを見て知ったんだとしても、一体何の用があってここに来たんだ?
「あのごめんなさい。どちら様ですか?」
「なんや、思ったより元気そうやな」
─────いやいや、誰だよ。