明日も歌う あなたのために
───だけど、余裕でいられたのは、それまでで……、
「そんなん同情やろ。口では何とでも言える。お前が死んじまえば後はハナちゃんも自由やからな。いっそ早く死ねと思っとるんやないか?」
ニヤニヤ、さっきから変わらないその不敵な笑み。
だんだんと俺の心を挑発する。
「──────花菜がそんな風にに思うはずはない」
「残してい逝く方は気楽なもんやなぁ?悲劇の主人公気取って、最後まで目一杯愛されてりゃいいんやろ?」
「──────違う」
悲劇の主人公なんかじゃない、花菜を残して死んだりしない。
花菜は俺の傷を舐めるために傍に居てくれるんじゃない。
「ハナちゃんだってそうや。結局、悲劇の少年に寄り添う健気な自分に、酔っとるだけや。あの女がほんまに愛しとるのは、自分だけや」
「─────黙れ…っ!!!」
バシンッと鋭い音を立てて、ノートを床に叩きつけた。
今まで感じた事の無いような強い怒りが込み上げてきて、身体が震える。
「お前なんかが………お前なんかが、分かったみたいな口利くなっ!!!」
下手したら部屋の外にまで響くような大声だったと思う。
だけど俺には、自分の心臓の音でほとんど聞こえていなかった。
一気に心拍数が上がったのが自分でも痛いほどに分かって、
共鳴したようにモニター心電図の異常アラームが鳴り響く。
耳を塞ぎたくなるようなその音も、どこか遠くで鳴っているように聞こえた。