明日も歌う あなたのために
植田先生は龍平くんを湊くんから引き剥がすと、肩で息をする湊くんの胸に聴診器をあてた。
「………苦しいね。落ち着いて、息して…」
植田先生の話を聞いているのか否か、額に大粒の汗を浮かべ、ぜいぜいと独特な息遣いをする湊くん。
植田先生は険しい顔をして、駆けつけた看護師の中の1人から酸素マスクを受け取り、湊くんの口元にあてた。
「ゆっくり息して……大丈夫だ……」
植田先生がそう優しく呼びかけながら背中をトントンと一定のリズムで叩くと、呼吸はだんだんと落ち着いてきて、
モニターに表示された心拍数も、徐々に正常値に戻ってきた。
「そうだ……上手いぞ……」
なんとか落ち着いて、植田先生に横にさせられた湊くんを見て、私もほっと肩を撫で下ろした。
それとほぼ同時に、
ずっと入り口付近で呆然と突っ立っていた添野さんが、ハッと我に帰ったような顔をして、病室を出ていこうとした。
「逃げんのかよ!!」
それに気づいた龍平くんは反射的に立ち上がり、物凄い速さで病室の扉の前に回って、添野さんの行く手を阻む。