明日も歌う あなたのために



反論する言葉を失った添野さんは、ぐっと息を呑んで一歩後ろに後退した。



「────……勝手にしろよ…っ」




捨て台詞のようにそう吐いて、廊下へ飛び出す添野さん。


「ま、待ってください!」



一体何があったの、

そう聞きたくて添野さんを追って廊下を出ると、病室の入り口のすぐ側に見覚えのある制服姿の女の子が立っていた。




「…………………花瑠」





久しぶりに見たその姿に、足を止めた。





「おねーちゃん………」






花瑠は怯えた様な顔で、声を震わせてそう小さく言った。




花瑠の声を聞くのも、顔を見るのも、あの日以来だ。






「高梨…………」




「え…?」





「高梨は…………大丈夫なの…?」





「え?ああ……うん。だいぶ落ち着いたわ」





ぎこちない会話。

視線が、交わらない。





「そっか………ならいいんだけど」



そう言ってそそくさと私に踵を返す花瑠を、思わず腕を引いて引き留めた。

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