明日も歌う あなたのために
「おねーちゃん、高梨と付き合い始めたんだってね?おめでとう…」
そう言った花瑠の瞳が、揺れている。
「私それを高梨から聞いた時、そりゃあもう動揺しちゃってさ………ボーッとしてたら車椅子倒しちゃうし、勝手に負けたみたいに思って、馬鹿みたいだよね……」
「花瑠……」
「負けたも何も、最初から勝負なんか始まってなかったんだもん……」
ね、可笑しいでしょ。と花瑠は無理矢理に引きつった笑顔を作ってみせるけど、その大きな瞳からは、どうしようもなく涙が溢れ出している。
胸の奥が、きゅっと縮こまるように痛くなった。
「ね………私ね、高梨が好きだったんだよ。知ってた?」
「────ええ…」
分かっていた。
だからこそあの日、花瑠は声を荒らげたのだと、心のどこかで分かっていた。