明日も歌う あなたのために


「───本当に臆病なのは俺の方なんだ」



独り言のように、ぽつりと零す。




「もう余裕なんてずっとないんだ。焦りっぱなし。後悔したくなくて、何も出来ないまま時間が過ぎるのが怖くて、1日を、他の人の何日分も生きなくちゃいけないような気がして」





高梨には時間がない。

その事はもうずっと前から本人も分かっていた事なのに。


今になって生き急いでしまうのは、どうして?




大きな発作で”死”を実感してしまったから?


余命半年と宣告されたから?




─────それもそうだけど、一番の理由はそうじゃない。







「守りたい人が、出来たからだね……」







高梨は本当におねーちゃんが好きだ。

誰もおねーちゃんには敵わない。






────だけどね、高梨。



私が高梨を想う気持ちも、誰にも負けてないと思うんだ。


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