明日も歌う あなたのために





「大好きだよ、高梨」







無性に、言いたくなって。

気付いたらそう口に出していた。



「うん、知ってるよ?俺も花瑠が大好き」



きょとんとした顔の高梨が、首を傾げて答えた。




もはや期待を裏切らないとも言える高梨らしい返しに、ガッカリを通り越して思わず笑みが零れた。



─────うん分かってるよ。

あんたと私の好きは違う。



それでも、嬉しいから。





「ねぇ、高梨。前言ったじゃない?好きな人がいるって」



「うん、覚えてる」



「でもね、その好きな人には恋人が出来ちゃったの」




「え………」



まるで自分のことのように悲しい顔をする高梨に、少しだけ罪悪感。


その好きな人って高梨なんだけど、とはまだ言えない。言わない。





でも高梨が言うように、後悔なんてしたくないから。



今、出来ることを。

今、伝えられることを精一杯。

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