明日も歌う あなたのために



「俺、花菜との事では花瑠に本当にお世話になったな………。なんか、お礼させてよ」



──随分唐突だなぁ…。




「じゃあ、早く元気になって」



「それじゃ花瑠へのお礼にならないじゃん。花瑠が喜ぶお礼がしたいんだけど」





───高梨が元気になってくれたら、一番喜ぶんだけどなぁ……。



だけどそんな返事では到底納得してくれなさそう。



「ん………じゃあさ」



ちょっとズルいけど、せっかくだからこんなのはどうだろう。



「元気になったら、一緒にケーキバイキングに行こう!」



「ケーキ?」



予想外な答えに不思議な顔をして首を傾げた。



「だって高梨、今はそうゆうの食べれないじゃない?だから、元気になった暁には、高梨のやれなかったことをやるの!」




たくさん我慢してきたんだもん。めいっぱい楽しんでほしい。




「他にもね、海やプールとか、遊園地のジェットコースター!高梨のやりたいこと、全部」




「花瑠…………」




「もちろん、バンドもだよ!」




「花瑠っ!!」




高梨はまるで子供のように、ぱぁああっと見る見るうちに顔を明るくする。




「花瑠……もうお前どんだけ良い奴なんだよ…」



「そんなことないよー」




「あるよ、ありがとう!まじで」




久しぶりに見た、高梨の心底嬉しそうな顔。

今はそれだけで満足だった。




「じゃあ私帰るね。高梨もゆっくり休んで」



「ん、ありがと」



「またすぐ明後日にでも、相沢も連れて来るから」




「ほんと?!でもなんで明後日?」




────あれ、気づいてないのかな高梨。



「だって明日は、私たちの出る幕じゃないもん。生憎、私に予定はないけどね」






─────明日は、クリスマスイブなんだから………。






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