明日も歌う あなたのために


「ん~じゃあさ、ちょっとお散歩しよ?」



湊くんは少し驚いたようにパッと顔を上げた。



「散歩??」



「うん。屋上……にちょっとだけ。あ、体調が良かったらだよ もちろん!」



「それは大丈夫だけど……いいの?仕事中でしょ花菜」



「これも仕事の内よ。その代わり、湊くんの嫌いな車椅子だけどね~」



意地悪くそう笑ってみせると、湊くんは柔らかく苦笑いした。



「もう文句言わないよ。自分じゃキツイのも事実だし。花菜が押してくれるの、嬉しいから」



さらりと照れくさいことを言う湊くんに、少し頬が火照ったような気がした。


それを誤魔化すように「じゃあほら、行こうか」と声をかけて湊くんを車椅子にのせると、

湊くんは当然のようにさっきプレゼントしたブランケットをひざ掛けがわりに両膝の上に敷いた。


やっぱり温かいね、なんて満足そうに微笑みながら。

< 299 / 303 >

この作品をシェア

pagetop