明日も歌う あなたのために


しっかりノックをして
湊くんの病室に入ると、
珍しくベッドのカーテンが閉まっていた。

個室だからというのもあって、
湊くんは寝る時でもカーテンを
開きっぱなしにしてることが多い。


「失礼します…」

そう小さく呟いてカーテンを
僅かに開けて覗くと、
湊くんは潜っていた布団から
もぞもぞと顔を出した。

テーブルの上には朝食が
置かれているけど、
手をつけていないようだった。


「ご飯たべるのきつい?」


「…………ゼリーは食べました」


「食べないとまた
点滴になっちゃうんだけど……」


それは嫌、とでも言うように
首を横に振った。

だけど、体調が良くないのは、
見れば誰でもわかる。


「しんどい?」


「──ちょっと気分が悪いだけです…」


そう言ってふらふらと
上半身を起こして、いつものように
私に腕を差し出した。

本来の目的を忘れかけていた
私は慌てて体温計を湊くんに手渡し、
血圧測定を始めた。


───訊くなら今………だよね。


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