明日も歌う あなたのために





12月の痛いほど冷たい風が、厚いはずのセーターをすり抜けていく。


思っていた以上の寒さに、思わず身震いをした。



「ホワイト・クリスマスじゃないのが不思議なくらいの寒さね……」


「俺は雪降って欲しかったんだけどな〜」


「あら、雪降ってたらお散歩しようなんて言い出さなかったわよ。私」




湊くんにはありったけの防寒着を着せて本当に良かった。




「外の空気吸うの、ほんと久しぶり。なんだかんだ再入院してから1度も外に出られてなかったな。もうすっかり冬じゃん」



「よく考えたら、まだ倒れてから3週間くらいしか経ってないのよね」



「うん。俺らが付き合ってから、ね」




そう言い直して得意げに笑うと、湊くんは唐突に大きく息を吸った。




え、と思った時にはもう、私の耳にはあの透き通るような透明な歌声が届いていた。
< 300 / 303 >

この作品をシェア

pagetop