明日も歌う あなたのために
「───佐原さん?大丈夫ですか?」
考え込んでいた私の服の裾を、
湊くんは心配そうに引いた。
こんな時の優しさも、いつもの笑顔も、
触れたいほどに温かいのに。
包み込んではくれない。
───その癖、寄り添おうとすれば、
この手からすり抜けていくんだね。
私は大丈夫よ、
そう答えようとした時だった。
ゴト、と鈍い音を立てて、
床を軽く跳ねて滑る、血圧計。
「…………………────っ!!!」
少し遅れて、落ちた体温計。
"あ、水銀の体温計じゃなくてよかった"
なんて呑気にも思った。
だけど、すぐに目の前の光景に
フッと意識を舞い戻らせる。