明日も歌う あなたのために


「湊くん!!?」


額大粒の汗を浮かべているのに、
土のように冷たい顔色。

胸の真ん中くらい。
みぞおちより少し上の辺りを
掴むように強く抑えて。

呼吸を忘れるような
やり場のない強い痛みを
身体の外へ発散するみたいに
肩からぶつかった棚からは、
湊くんの笑顔を写すあの写真が
写真立てごと床に落ちた。


「湊くん!!」


「大丈夫、ですから…………」


そう言った湊くんは
胸元から手を離し、
とりあえずは落ち着いたのか
深呼吸をしたけれど、
まだその顔色は”大丈夫”ではなかった。



「滝野先生呼んだから……、
すぐ来るから、もう少しだけ頑張ってね」



滝野先生は本当にすぐ来てくれて、
手際よく湊くんを診てくれた。
看護師である私は、その手伝いに
ひたすらに駆け回っていた。


湊くんが嫌がっていた点滴も、
すぐに施されて、湊くんはいつのまに
眠ってしまった。



暫くして先生たちが病室を出ていって、
何度か顔を見たことのある
湊くんの母親と、見知らぬ小さな女の子。
多分…妹が、湊くんの病室を訪れ、
私も病室を後にした。



結局何も、聞き出せないまま。





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