明日も歌う あなたのために
「湊くん、湊くん」
心地よい声に目を覚まして、ぼーっとした頭で瞬きをする。
すると、半開きになったカーテンから佐原さんが顔を出していた。
「おはよう。よく眠れた?」
その笑顔に、昨日のことをまた思い出してしまって。それを振り払うみたいに大きく頷いた。
「お熱と血圧図るね」
言われるまでもなく、体温計を受け取り、腕を差し出した。
すると佐原さんも何も言わず、俺の腕にマンシェットとかいう血圧を測るバンドのようなものをきつく巻き付けた。
そしてピピピ…と鳴った体温計を俺から受け取って、「微熱だねぇ」なんて呟く。
いつも通りだ。なにもかもが。