明日も歌う あなたのために
「俺抜きでやりたくないって言うなら、尚更早く挙げた方がいいんじゃない」
俺のその一言に、兄ちゃんはみるみるうちに顔付きが変わる。
あ、まずい。と思った時にはもう遅かった。
「おいそれ、どうゆう意味だよ!!」
わなわなと、今にも震え上がるような形相で机にバンっと手をついた兄ちゃん。
「───………だってそーじゃん。せっかくの結婚式費用が葬式費用に成り代わっても知らないよ」
「……っ!! お前っ!!!」
衝動的に、兄ちゃんは俺の胸ぐらをぐいっと掴んだ。
───あーあ………マジギレだ………。
まぁ、完っ然に俺が悪いんだけどね。
普段の兄ちゃんからは想像もつかないような恐ろしい顔付きで、
俺の胸ぐらを掴んだ手の逆の手を、兄ちゃんは感情に任せて拳にして、俺に振り下ろそうとする。
───嘘だろ………っ。
これにはさすがに俺も怯んで、ぎゅっと目を瞑った。
───だけど、いつまで経っても拳は降ってこない。